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東京地方裁判所 平成3年(行ウ)163号 判決 1991年9月24日

原告

奥田寿太郎

被告

最高裁判所

右代表者長官

草場良八

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  本件訴えは、

「1 平成三年五月八日付け最高裁人公D第五号により、申し立て人に通知された、不利益処分についての不服申し立ての却下の裁決を取り消す。

2 被告は、別紙処分内容記載の処分を取り消せ。

3 被告の原告提出の退職申請の受理の無効を確認し、原告の釧路地方裁判所裁判所書記官としての地位を確認する。

4 訴訟費用は被告の負担とする。」

との判決を求めるものであり、その請求の原因は、請求の趣旨1項につき、別紙(1)のとおりであり、その余の請求の趣旨につき別紙(2)(右にいう「別紙処分内容」)のとおりであるというのである。

二  そこで按ずるに、まず、請求の趣旨2項で原告が取消を求めている別紙(2)の「処分内容」記載の処分なるものは、いずれも純然たる職務命令あるいは事実行為にすぎず、行政事件訴訟法にいう処分たる性質がなく、したがってまた、裁判所職員臨時措置法の準用する国家公務員法八九条一項にいう「著しく不利益な処分」に該当しない。したがって、これが取消を求める法律上の利益は原告になく、ひいては、請求の趣旨1項についても、当該裁決の取消によって回復すべき法律上の利益が原告にはないことが明らかである。また、右に処分者というのはいずれも本件被告とは異なる者であるから、「処分」の取消を求める訴えとしてはその意味でも不適法であり、また、審査庁である被告に対する義務付け訴訟が不適法であることも多言を要しない。そうすると、「処分」といえないものを対象として、その取消を求める法律上の利益がないのに、しかも、自らその「処分者」とする者でない者を被告として提起した請求の趣旨2項の訴えは、いかなる観点からも、訴えの利益を欠くものというべきであり、また、「著しく不利益な処分」に該当しないものについて法律上の利益がないのに審査請求を求める請求の趣旨1項の訴えも不適法であることが明らかである。そして、以上の訴えの不適法事由については、訴えの利益の欠缺を補正することができないものであることが明白である。

次に、請求の趣旨3項の訴えについても、被告は、国の機関にすぎず、民事訴訟上の当事者能力を有しないから、訴訟要件を欠く不適法なもので、その欠缺を補正することはできないものといわざるを得ない。

したがって、本件訴えは、いずれも不適法でその欠缺を補正しがたいから、民事訴訟法二〇二条に基づきこれを却下する。

(裁判官 松本光一郎)

〔別紙1〕

1 平成三年二月一四日付け最高裁人公D第二号最高裁判所事務総長の補正命令について

申し立て人は既に平成三年一月八日付けの書面による最高裁判所事務総局人事局公平課異議審査係の要請に基づき本件が人事院規則一三―一第三条二項但し書きに該当する旨を述べ、処分説明書の交付請求をして交付されなかった場合の経緯を記載した書面を補正命令に沿って提出している。

2 平成三年二月一八日、電話で最高裁判所人事局公平課に平成三年二月一八日付けの書面について、問い合わせたところ、次の回答を得た。

<1> 平成三年一月八日付け補正命令に対する申し立て人の補正では補正にならない。

<2> 今後、申し立て人が処分庁に対し処分説明書の交付を請求して、平成三年二月一四日付けの補正期間に交付されなかったとしても、先の書面に対する一ケ月間の補正期間の懈怠によるものだから却下の猶予は考えていない。

3 平成三年一月八日付け、平成三年二月一四日付け、の補正命令に対する疑問

<1> 申し立て書の提出日付が平成二年七月一九日なのに、何故、その五ケ月後の平成三年一月八日に補正命令がなされたのか。つまり、補正命令の発布はなぜ遅れたのか。

人事院規則一三―一第三条二項によれば、審査請求書には処分説明書の添付が義務付けられ、また請求して交付されなければ、添付は不要とされている。

しかし、申し立て書自体に既に、「三 処分説明書については処分の理由さえ述べられなかったので、交付されていない。」と明記されており、申し立て書の内容からその経緯についても、ある程度の推測は可能であるので、平成二年七月一九日の申し立て書が提出された段階で、処分説明書が添付されていないことが、受理要件として、不備か否かの検討はできたはずである。

審査請求されている処分は平成元年の暮れにかけてなされているから、国家公務員法九〇条の二の一年の申し立て期間の規定を意識した処置との疑いを免れない。

<2> 処分説明書は原則として、添付しなければならないと、条文上明記されているので、その添付が不要とされる場合は例外的な場合である。

その例外的な場合であることの認定として、平成三年一月八日付け補正命令は『交付請求をして交付されなかった場合の経緯を記載した書面』の提出を求めており、申し立て人はそれに沿って、その書面を提出している。

電話回答は、申し立て人が提出した書面が、審査請求の受理要件として不十分であるというが、その要件の基準が不明である。申し立て人は、補正命令から客観的に解釈し得る限りで、補正に応じた書面を提出しているからである。

<3> 処分説明書を交付されなかった経緯を書いた書面の作成名義は、処分庁ではなく申し立て人なのだから、公平委員会では、審査請求書の受理段階では、申し立て人の言い分しか、聞けないし、もし、規則三条二項但し書きの場合においても処分庁の言い分をも聞かなければならないのでは、審査の始まる以前から、実質的な審理を始めなければならないことになり、違法行為をせねばならないことになる。

今回の公平委員会の補正審査が許されるならば、もし、処分庁が公平委員会の審査を望まない意思であるときには、規則一三―一第三条二項を盾にして処分説明書を交付しないことによって、その目的がやすやすと実現されてしまうことになる。

規則第三条二項但し書きは、まさにかかる処分庁の恣意を咎めるためのものであると、解される。

<4> もともと、申し立て人が不服を申し立てる動機は、こうである。処分庁は、処分をする際、処分を受ける者の意思を確認せねばならないのであって、処分を受ける者は、処分の理由を聞かなければその処分に対する意思形成はできないのである。申し立て書にある申し立て人の不服はまさに、理由のない不利益処分であることに原因しているのである。処分説明書の交付にみられる、不利益処分をなす、処分庁のかかる公正な手続きのなされないことが、不服申し立ての骨子であることは、申し立て書全編に亙って主張されていることであり、その審査の要件不備との判断の理由が、処分説明書の添付がないというのでは、のれんに腕押しの感を免れない。

<5> 処分説明書が請求にもかかわらず、交付されないとき、申し立て人は交付されないことを説明して処分説明書を添付しない以外のことはできるわけがない。規則一三―一第二条但し書きが処分説明書の審査請求書への添付を不要としているのは、当たり前のことを言っているにすぎない。

ひるがえって、考えると、公平委員会は、但し書きのような場合は、何をもって審査請求の受理要件にしようというのだろうか。

規則一三―一第三条但し書きの規定の存在にもかかわらず、処分説明書の添付されない審査請求書は、受理しないということなのだろうか。『経緯を書いた書面』は内容はともかく提出されているのである。その内容が公平委員会の納得するに足りないという判断に踏み込むことは、とりもなおさず、審査請求の理由が納得できるか、否かの判断に踏み込むことと同じであり、その時は請求を棄却すればすむことである。

そもそも、一般論として、かく言うことが可能である。制度は使われるためにある。制度自体が国民の利用を促しているはずである。犯罪者処罰制度のように、制度が使用されないことが、社会的に望ましいものがあるが、しかし、制度自体は、使用されることを望んでそこに存在している。

しかるに、公平委員会の補正命令は、請求にもかかわらず、処分説明書の交付の受けられない申し立て人のような立場の者にとっては、殆ど不可能を強いるものであり、公平委員会の制度の存在を自ら否定することになる。処分庁に請求すると、交付しないといい、公平委員会にその旨説明すると、その説明だけでは足りないという。もし、悪意がそこに存在するなら、随分な子供だましという感想を免れない。

<6> 確かに、受理要件が、満たされているかを審査するのは、公平委員会である。しかし、公平委員会といえども、何らかの資料に基づき審査するのであって、無から有は生じ得ない。『経緯を書いた書面』の提出がある以上、要件が満たされないという結論に至るには、何らかの特別な資料が必要であるが、処分庁の作成すべき処分説明書がない以上原則として、請求書の受理段階では申し立て人の言い分を信ずる他ないはずなのである。

たとえ、申し立て人が嘘をついていたとしても、制度の構造から、その嘘を発見し、判断するためには、審査を始めなければならないことになっていて、制度はむしろ、それ以前に、嘘を発見し判断する行為を公平委員会に禁じているのである。

かかる公平委員会の理解しがたい処置の理由を、忖度するとき、所詮単なる憶測に過ぎないには(ママ)ても、公平委員会はすでに、処分庁の言い分を聞いてしまっているのではないかと、推測することも可能と思われる。もし、そうでなければ、申し立て書、補正のための書面を読む限りは、処分庁はかなり危険な行為をしていることになるはずであり、公平委員会が捨てておけるほどに、軽い事件ではなく、まさに国家公務員法違反の懲役刑に処せらるべき犯罪行為である。もし、そうであるなら、公平委員会もただではすまないことになる。

最高裁判所事務総局人事局公平課殿

平成三年二月二五日

申し立て人 奥田寿太郎

〔別紙2〕 処分内容

一 処分を受けた者

北海道根室市梅ケ枝町三の一六

奥田寿太郎

昭和二七年二月八日生

釧路地方裁判所民事部裁判所書記官

(退職)

二 処分者(官職は処分当時のもの)

五 2、5、7、11、12、17、18、20について

釧路地方裁判所長 逢坂芳雄

五 9、13、14、16について

釧路地方裁判所民事部長判事 橋本和夫

五 1、3、4、8、10、19について

釧路地方裁判所民事首席書記官 佐藤哲雄

五 6について

釧路地方裁判所民事訟廷管理官 小梨貞男

五 15について

釧路地方裁判所民事主任書記官 小林皓一

三 欠番

四 欠番

五 処分の内容及び時期

1 平成元年一一月一日午後一時、口頭による首席命令で、釧路地方裁判所庁舎内準備手続き和解室に、意に反して呼び出され、同裁判所刑事部長判事、同事務局長、同民事首席書記官、同総務課長、立ち会いのもと、録音機を用意され、数十に及ぶ、同僚、来庁者の通報に基づく自己の行状のメモを読み上げられ、三時間以上にわたり詰問を受け、そのメモの写しは、再三の要求にかかわらず、交付されなかった。

2 同月八日午後四時三〇分、首席の口頭伝達による所長命令で、同月九日及び同月一〇日に予定されている法廷立ち会いを禁止される。理由は、調書作成の遅れというだ(ママ)が、その調査は、同月二日の担当裁判官の告知のみで、事実は、数件の証拠調べ調書が、期日後二週間程度のうちに完成されていないというだけである。

3 同月九日、首席の口頭による命令で発言を禁止される。

4 同月一三日、管理官による口頭伝達の首席命令で、民事部内の係属記録の一斉点検。同月一〇日に、申し立て人保管の民事係属事件記録一冊が、開廷五分前に紛失していることが判明している。同点検は同月一四日実施された。

5 同月一四日午後四時三〇分、書面による所長命令。内容は、同月一五日正午及び同月一六日午前一一時及び同月二二日午前一一時に、高血圧症のため、一〇年来受けて来た投薬を患者である申し立て人に無断で中断し、申し立て人から抗議を受けた当裁判所健康管理医の指定にかかる精神科医の診察を受けよ、とのもの。本命令は、人事院規則一〇一四第二一条に基づくと明記しているが、同条の運用基準によれば、申し立て人は「精神障害であって自己若しくは他者に危害を及ぼすおそれのある者」ということになる。

尚、本命令の出る二ケ月くらい前から、申し立て人は民事部長、総務課長の度重なる診断の勧めを明示に拒んでおり、明示の拒否にかかわらず、総務課長が、老齢の同居の申し立て人の母に再三申し立て人に無断で、説得し、東京在住の申し立て人の姉弟のもとへも再三電話で説得し、ために姉弟五名が、申し立て人の様子を見るため、東京から空路釧路へ来て仕事を休まざるを得なくなったこともある。

6 同月一五日午前九時、申し立て人が、偶然、管理官の机上に、録音マイクらしきものをみつけ、管理官に質問すると、コードを机上のマットの下に這わせ、本体を机の引き出しの中に入れてある、隠し取り録音機が見付かった。同意のない違法行為であると抗議すると、申し立て人の言い分を正確に覚知するためであると管理官は言う。その後二、三日も公然と机上に録音機を置いて無断録音が試みられ、申し立て人は、抗議のために録音機を床に叩きつけざるを得なかった。

同月二〇日、同僚と口論をしている申し立て人の腕を管理官が両手でつかみ引っ張るので、申し立て人は暴行に該たると注意したが、管理官がいっこうにやめようとしないので、申し立て人は一一〇番通報をし、警察官を呼んだが、首席、局長は、管理官の行為は暴行に該たらない、ととりあわない。

右二〇日の事件以前にも一四日、管理官は申し立て人の体を両手で押し、以後の三〇日には、申し立て人の体をつかんで投げ倒し、同年一二月一日には、管理官は部屋の職員八名とともに、申し立て人に対し集団暴行を働き、やむを得ず申し立て人は一二月五日、釧路警察署へ告発状を提出したが、同月七日午後五時の申し立て人の問い合わせに対し、同署は些細なことを理由に、右告発状は未だ検察官へは送られていないと回答した。

申し立て人は、職務として、かかる上司の再三の暴行を受忍する義務はなかった。

7 同年一一月一五日午前一〇時、首席の口頭伝達による所長命令。同月一六日、一七日に予定されている法廷の立ち会いを禁止される。理由は、申し立て人に受診命令(その中で法廷の予定されている一六日に健康診断の日を命じている。)が発せられていること、紛失した記録が申し立て人の保管扱いのものであるので捜索せよとのこと、調書の完成が遅れていること。

8 同月一六日、文書による首席指示。内容は所在不明の事件記録を一七日に提出せよ、という実行不可能なもの。また、口頭で、勤務時間外である正午から午後一時までの昼休み、及び、退庁時刻後の午後五時以降、自宅において、記録を捜せという命令があり、申し立て人は当然に拒否した。超過勤務命令は出さないと明言されたからである。

9 同月一七日、口頭による部長命令。一〇月六日実施された証拠調べ調書の作成より、一一月二日実施された和解調書の作成を優先せよ、とのもの。理由は弁護士の催促があったということ。拒否する。

10 同月一八日(土曜日)。同月二〇日(月曜日)午前一〇時に次回期日の指定されている事件の前回期日の調書が未完成であることに気付いた申し立て人は、その旨を伝え、首席書記官に、当日の超過勤務を申請したが、申し立て人の過失を理由に却下され、その直近の上司である所長に電話で申請すると、首席と相談すると返事をしたきり音沙汰がない。再び電話すると、所長は、首席に同じと言う。期日前に前回期日の調書を完成させることは、民事訴訟法の要請である。申し立て人はやむなく、記録を自宅にもち帰り、土曜日、日曜日の休日を裂いて、調書を完成させた。

11 同月二〇日、部長伝達の所長命令が、午前一一時に出された。自宅内で紛失記録を探せ、という内容。ちなみに、当日午前一〇時には、申し立て人の通報でパトロール警察官が、裁判所内に立ち入っている。同日午後九時、申し立て人の電話の質問に対して、一一〇番は、申し立て人の所長命令による帰宅後、釧路警察署と裁判所の事務局長及び総務課長の間で話し合いがあったと回答した。両名は現場に立ち会ってもいないし、申し立て人は両名に対して何の報告もなしてはいない。

12 同月二四日午前九時、口頭による首席の伝達による所長命令。内容は、当日予定されている法廷の立ち会いの禁止。理由は、「記録をなくするような書記官には法廷に立ち会わせない。」。

13 右同日、午前一一時、口頭による部長命令。申し立て人の申請にかかるものだが、自宅内で記録を探せとのこと。尚、同日午後については、新たな所長命令があったということで、申し立て人は欠勤扱いされ、憤慨した申し立て人は同月二七日、所長の過失責任を追及して釧路簡易裁判所へ訴えを提起している。

14 同月二七日、午前一一時一〇分、口頭で部長命令。記録紛失の顛末を書面に書いて提出せよ、とのこと。首席の話では、記録紛失の件を最高裁に報告しているか否かは申し立て人には告知する必要はないとのこと。この部長命令の顛末書を最高裁報告に使用するか、との申し立て人の質問に対し、それもあり得る、とのこと。申し立て人の作成する文書は公文書であり、使途不明の公文書は作成するわけにはいかないと、申し立て人は本部長命令の実行を拒否した。

15 同月三〇日午前九時、小林主任書記官から、「今日の法廷は俺が入る。」との主任命令。申し立て人は刑事部の慣行のように、申し立て人は主任とともに法廷立ち会いをするのか否か、翌一二月一日に予定されている期日については、どうなるのか、との申し立て人の質問に対し、主任は何らの回答もしない。ただ、主任は「俺は所長命令を受けた。」とのみ言うだけである。立ち会いを予定されている書記官に対し何らの通知はなく、他の上司に対し、申し立て人の職務に関する命令を出すというやり方は、この時が最初である。

16 右同日午前一〇時、口頭による部長命令。同日朝方、主任から「君の未済の記録を昨日、退庁時刻後、部長の命令で部長に提出した。」と告げられ、申し立て人が、当該記録数冊を調査したところ、申し立て人作成の調書に裁判官の認印が施されている。前日である二九日に、申し立て人は、部長から当該記録数冊を提出せよと言われたが、申し立て人の記名押印はあっても、申し立て人は細かな部分の検討はしていなかったので、申し立て人は、調書が未完成であることを理由に、部長に対し、記録の提出を拒否していたという事情があった。それで、申し立て人は「これらは無効な文書なので、書き直させてもらう。」と言い、当該調書を記録からはずして、自己のバックに封筒に入れてしまったところ、部長外数名の管理職が、申し立て人の机の前に威圧的に立ちはだかり、頭書の部長命令がなされた。内容は、申し立て人がバックにしまった調書を引き渡せというもので、理由は告げられていない。ちなみに、部長は、書面による、申し立て人の記録保管義務を免除するという内容の所長命令をとりつけることを確約した。申し立て人はやむなく当該調書を部長に引き渡した。

17 右同日午後四時、文書による所長命令。内容は、申し立て人が保管中の事件記録を主任に引き継ぐこと、というもの。保管義務の所在、移動については触れられておらず、申し立て人の引き継ぎ行為終了時に保管責任も主任に移ると解するのが妥当である。にもかかわらず、一二月二日午前九時には、首席は、引き継ぎ行為は自分たちが代わりにやったので申し立て人には、記録の入ったスチールの鍵は渡す必要はない発言した。通常、数十冊の記録を引き継ぐ際には、各記録の点検、郵便切手の類いの確認、引き継ぎ事項の報告等、一週間程度の期間が必要であり、特断の事情のない限り、他の者が代替することは許されない筈である。所長の電話による回答は、「引き継ぎは終了したと報告を受けている。」ということだった。

18 同年一一月三〇日午後三時三〇分、総務課長、管理官の口頭伝達による所長命令。同月一日と同様、準備和解手続き室で、受診命令違背と記録の紛失について申し立て人の言い分を聞くから、来い、というもの。一一月一日には管理職四名の面前で、詰問された後、局長からは「調子に乗るなよ。」、刑事部長からは「正義の使者気取りだ。」との侮蔑的な暴言を受忍することを余儀なくされているので、管理職サイド代表一名選出のうえ、非公開の質問、応答を要求するが、四名の面前でということは所長命令の重要な部分であることを理由に、受け入れられず、命令を拒否。

19 同年一二月二日午後九時、事務局次長の口頭による命令。当日は土曜日で、翌週月曜日である同月四日午後一時半に予定されている事件の調書を完成させようと、裁判所庁舎を訪れた申し立て人は、仕事に関する自己の職務を宿直主任から、所長命令が出ていることを理由に妨害されたうえ、庁舎管理規定を楯に頭書の命令を受けた。内容は、「退去せよ。」。申し立て人は理由不明のまま、平成元年初めから宿直割り当てから除外されているが、申し立て人が宿直勤務をしていた当時から、職員が退庁時以後に庁舎に入ることは、特段の事由のない限り許されているのが慣行であり、まして本命令は異例のことである。

20 平成元年一二月二日午後〇時三〇分、申し立て人が、退庁のため釧路地方裁判所書記官室を出ようとして、出入り口の方へ向かうと、小梨管理官外数名は申し立て人の手足を、取り押さえる、衣服を破るなどの暴行で、これを阻止したため、申し立て人は同日帰宅後及び翌週月曜日に再三釧路警察署へ電話をしたが、警察は「出頭しなければとりあわない」と言うので、一二月五日午後六時三〇分、同署へ出頭のうえ告発状を提出した。

同年一二月四田(月曜日)午後一時三〇分、申し立て人は、自宅で、紛失した事件記録を探すために、部長命令で橋本裁判官から「以後、当分の間」自宅待機を命ぜられた。その後、同月五日中に、釧路保健所から保健婦二名が訪ねて来て、申し立て人の母の血圧を測りたいと言うので、申し立て人は不審に思い、誰がその指示をしたかを訪ねると、裁判所の健康管理医の本田医師だというので、申し立て人は本田には医師法違反で訴えるつもりだ、ときびしく言って追い返した。

同月七日(木曜日)井川総務課長及び室井同課長補佐が来宅し、八日から出勤せよ、との命令。警察に提出した告発状の処理が一段落するまで自宅待機が続くと思っていた申し立て人は不審に思い、警察へ電話すると、やはり同月五日に申し立て人が提出した告発状は検察官へ送付されていなかった。申し立て人は、警察と電話で押し問答した後、釧路検察庁へ電話すると交換手すらもこの事件を知っており、「上司に相談すればいい。」と笑われた。検察官を電話口に出してくれるよう頼むと、七、八人いる検察官すべて捜査のため外出しているということだった。

それ故、同月八日(金曜日)は欠勤覚悟で申し立て人は出勤しなかったが、同日午前九時過ぎ、井川総務課長は玄関先から、申し立て人の母を呼び付けたり、ベランダから家屋内を覗き込んだり、自宅周辺をうろつくなどのいやがらせを加えた。また、同日中にさきの保健婦も来て、保健婦は玄関のドアを叩いたり、ドアの郵便受け口から大声で呼ぶなどの、住居の平穏を害する振る舞いに出た。

翌九日、申し立て人は審査請求申し立て書を人事院へ発送した。後日、東京で確認したところ、同書面は同月一五日付けで却下されていた。

一二月一〇日(日曜日)、マスコミで現職警察官のセントラルファイナンスへの前歴たれ流し事件が報道された後、釧路警察署へ電話すると、申し立て人が五日に提出した告発状は受理され、検察官へ送付されたということであり、故意に遅らせた訳ではないとの弁解すら聞かされた。

それ故、一二月一一日(月曜日)は申し立て人は出勤したが、午後一二時前、井川総務課長が保健所が来ているというので、申し立て人は会うつもりはないと言うと、北海道の精神衛生官吏一名と先の保健婦二名が、突然民事部長書記官室に入り込んで来たので、申し立て人は驚いて靴も履き替えずスリッパのまま、庁舎裏の自宅官舎へ帰ろうとするが、三名は申し立て人の進行を腕をつかんだり、立ちはだかったりして妨害した。自宅官舎玄関先でも実力で、玄関のドアを閉めさせない。精神衛生法に当時全く無知であった申し立て人は、「警察を呼んでも構わない。」との言葉や、衛生官吏の監察に惑わされ、やむなく、申し立て人の母の身体的な心配もあり、後日の面談を許した。

同日午後、やむなく官職を諦めた申し立て人は、翌一二日の便で東京の親戚宅へ申し立て人の母とともに身を移し、一三日辞職届を東京から釧路地裁宛に書留速達で発送した。その後、連日のように井川総務課長と釧路保健所から東京の親戚宅へ電話があったが、申し立て人は証拠として残る文書以外の応答はせぬつもりで、電話へは出なかった。保健所は申し立て人が退職願いを提出したと、申し立て人の親戚の者から聞くと、以後電話はして来なくなり、井川総務課長も一九日付けで退職を受理したとの報告いごは電話はして来ない。申し立て人の親族に電話をすることは、裁判所側の一年来続けて来たいやがらせ方法である。他にとり得る手段はいくらでもある。

以上のいきさつは、国家公務員法三九条違反の刑罰事由であり、退職の受理・承認は明らかに無効である。ちなみに、人規一〇―四、二一条の運用基準の内容は、精神衛生法とほとんど同じである。裁判所側のかかる強行なやり方の背景には、裁判運営における様々な国民無視の態度、遵法精神の欠如が見られるので、本申し立てに及ぶ次第である。

六 処分に対する不服の理由

五に記載した個々の命令は国公法八九条にいう職員に対する著しく不利益な処分には該たらないが、わずか一ケ月の間にこれだけの数の命令が一職員になされていること、その内容が職員の人権を侵害するものであること、裁判所法六〇条の裁判所書記官の職権を、根本的に無視するものであることを考え合わせ、申し立て人の社会的地位を、著しく損なうものである。

以上

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